背景

文化省が必要な背景1 「文化芸術の振興と行政」

文化庁が文部科学省の外局として設置されたのは、1968年。教育・科学技術を扱う省の一機関という位置づけの中で50年弱が経過しました。伝統文化財、文化芸術、著作権、宗務、国語、国際交流を担っていますが、「文化」は世界中の人の日々の暮らしや価値観、生き方などに幅広く関わり、その重要性はグローバル化の時代の中で一層高まってきています。

そのため、日本の行政機関の中でも、文化外交、文化の国際交流、世界平和の点からは外務省、大きな経済活動につながるエンターテインメント・ビジネスの点からは経済産業省、国宝などの文化財、寺社仏閣や劇場をはじめ観光資源として生かす点からは観光庁と、それぞれの省庁でも文化が扱われています。時代に対応すべき文化庁の機能は弱く、文化について国としてイニシアチブを発揮する機関は存在しません。

国として、文化を軸とした政策を効果的に展開していくためには、内閣の機関としての「文化省」が必要です。文化担当大臣を配置し、子どもの成長の中での文化を含め文化政策の充実を図ることが、急務となっています。

文化を扱う政府機関としての司令塔

文化を扱う政府機関としての司令塔 図

文化省が必要な背景2 「日本の文化と制度」

日本の文化に関する制度としては、1950年、戦後の復興期に、教育行政の中で文化財の保護に関する法律が再整備され、また図書館や博物館の位置づけが明確化されました。図書館法、博物館法では、資料収集・保存を行うとともに一般公衆の利用に供することと、専門的職員の配置など運営に関して必要な事項が定められています。

一方、実演芸術を含む事項に関しては、1970年に旧著作権法の全面改正がなされ、著作物や実演、レコード、放送などの著作権および隣接する権利が定められましたが、文化芸術の振興に関しては、21世紀まで明文化されていませんでした。2001年に「文化芸術振興基本法」が施行され、基本理念とともに国や地方自治体の責務が示されました。

文化を享受する場所としては、図書館や博物館と並び、公民館もありますが、その役割は社会教育法の中で地域住民に向けた事業を行う場として規定されています。演劇、音楽、舞踊、演芸、伝統芸能等、実演芸術の上演に際しては、舞台設備に加え、専門人材が不可欠です。この事実から、文化芸術振興基本法の理念のもと、2012年に「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」が施行されました。
文化芸術の振興にあたっては、今後も時代に応じた法整備が必要ではないでしょうか。

文化に関する法律

文化財保護法
1950年施行。1949年の法隆寺金堂火災をきっかけに、文化財の保護についての総合的な法律として制定された。本法律の制定を受け、前身である史蹟名勝天然紀念物保存法(1919年)制定)、国宝保存法(1929年制定)及び重要美術品等ノ保存ニ関スル法律(1933年制定)は廃止された。

図書館法
1950年に従来の図書館令及び公立図書館職員令に代わって制定された。公共図書館の行うサービスを規定し、公共図書館に置かれる専門的職員(司書、司書補)の資格について定めている。

博物館法
1952年施行。社会教育法の精神に基づき、博物館の設置及び運営に関して必要な事項を定めている。博物館に置かれる専門的職員として学芸員、学芸員補の資格について定めている。この法律における博物館は、所管地域の教育委員会の登録を受けたものである。

著作権法
1970年に旧著作権法を全面改正して制定された。著作物並びに実演、レコード、放送、有線放送に関し著作者の権利およびこれに隣接する権利を定め、保護している。

文化芸術振興基本法
2001年施行。文化芸術の振興に関する基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにし、施策の基本となる事項を定めている。

独立行政法人日本芸術文化振興会法
2002年施行。独立行政法人日本芸術文化振興会が、芸術家及び芸術に関する団体の行う芸術の創造や普及活動等を援助し、伝統芸能の保存・振興を図ることを目的としている。芸術文化振興基金を設けて助成や劇場運営等の業務を行うことを定めている。

劇場、音楽堂等の活性化に関する法律
2012年、文化芸術振興基本法の理念のもと施行。劇場、音楽堂等を設置・運営する者と実演芸術団体等、国、地方公共団体の役割と関係者の連携協力を明確にし、国及び地方公共団体が取り組む事項などが定められている。

文化省が必要な背景3 「文化芸術振興に不可欠な助成制度」

国の文化芸術振興の政策手段は大きく3つに分けられます。
 ① 国立劇場、美術館、博物館を設置運営する施策(6つの国立劇場群)
 ② 国の政策的な必要性から実施する直接事業(子どもの体験、芸術祭など)
 ③ 芸術団体、劇場、映画の組織・プロジェクトの理念に基づく自主的な活動への助成

以上の何に重点を置くかにより、その国の文化政策のかたちがはっきりしてきます。例えばイギリス、アメリカは直接助成の比重が高く、フランス、ドイツなどヨーロッパ大陸は国立機関への運営助成の比重が高いという構造です。

イギリスの文化政策 図
アメリカの文化政策 図
フランスの文化政策 図
日本の文化政策 図

日本では芸術団体への直接助成の比重が低く、実演芸術への助成は文化庁予算全体の6%、映画へは0.5%となっています。2001(平成13)年に文化芸術振興基本法が制定され、文化庁予算は翌年に急増し、1,000億円の大台に乗りましたが、それ以降は、ほぼ横ばいです。一方、実演芸術団体に対する直接助成、映画製作に対する助成はともに減少しています。

理由は、子どものための芸術事業や映画以外のメディア振興等の新たな政策課題に助成が必要となったにもかかわらず、全体予算は増えないまま、既存の主には直接助成を削るかたちで分配することになったからです。

芸術創造助成と文化庁予算の推移

直接助成の強化を

東京オリンピック・パラリンピックに向けた文化プログラムを実現するためには、直接助成を強化していく必要があります。実演芸術の創造を支える助成には、芸術団体への直接助成と劇場に対する助成があります。2012(平成24)年の劇場法制定により少し増えましたが、ピーク時よりはまだ少ない。映画製作についても同様です。芸術団体100億円、映画10億円規模が望まれます。1990(平成2)年に芸術文化振興基金がつくられ、現在は芸術活動の実態把握のための調査研究が進められています。これを活用し、ジャンルごとの特性に応じた効果的な助成の強化を行う時期にきています。

映画の課題

映画に関する課題については、現在、フィルムの収集保存体制が危機的な状況にあります。映画製作はフィルムからデジタルに変化したことにより、今まで現像所に預けられていたフィルムが製作者に返還され、その先で散逸する事態が起きています。文化芸術振興基本法が制定された翌年、映画振興のための委員会が設置され、フィルムセンターの機能強化予算も増えましたが、その後は、ほぼ横ばいです。そしてもう1点、製作委員会方式による共同著作物の権利のあり方が曖昧になっていることも問題です。フィルムセンターの機能強化と予算の充実。収集・保存・活用のための権利処理を含む新たな仕組みが必要です。

文化庁予算と国家予算

国家予算に占める文化予算の割合を見ると、2002(平成14)年に急増した後は、2006(平成18)年をピークに減少に転じています。国の政策における文化芸術の優先順位が上がっていないという問題が見えてきます。世界に類をみない日本の多様な文化を支えてきた芸術団体への直接助成が、わが国の文化の基盤をつくっていく上で重要な仕組みとなります。

文化庁予算と国家予算割合

(参考資料)各国の文化予算の比較

図表・1 各国の文化予算額の比較(2015年度)
図表・2 各国の文化予算が国家予算に占める割合の比較(2015年度)

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